「あのさ、それ、なに?」
乱暴な手つきに堪えかね、濡れた髪を自分で拭くため途中から奪ったタオルを返しながら、イルカはざっくばらんに聞いた。
「は?」
花壇に水をやっていた男は足元にじょうろを置いたまま受け取ったタオルとイルカを見比べた。
「タオルじゃない。目。なんで色違いなんだ?」
「………」
絶句して間の悪い園芸部員(多分)は吹き出した。
「聞きにくいことを聞く子だね。アンタ」
笑われたのと子ども扱いされたのとアンタ呼ばわりにイルカがカチンと来る。
しかもムッとして睨みつけたら、片目がカラーコンタクトだとすぐ分かった。
「悪かったな」
むかつく。なにが悪いというわけではないが、こいつとは相性が悪い。絶対悪いに決まってる!
踵を返し立ち去るイルカの肩に相手が軽く手をかけた。それだけで、体が浮いた…気がする。
まさか。
背筋がぞくっとして飛び退き、慌てて振り向いた。
相手は一歩も動いていない。さっきと変わらないどこか気の抜けた様子で立っていた。
「おまえ…、」
「こっち側は弱視でほとんど見えないのよ」
「…え?」
「生まれつきでね。色彩異常もあるから、補正用に色つけてるってわけ」
「え?」
予想外の告白に、思考が止まる。
呆けたイルカを見て相手は人の悪い笑みを浮かべた。
「信じた?」
「…嘘なのか!?」
反射的に頭に血が上る。
今にも掴みかかってきそううなくせに、それでも片目を気にしている様子のイルカに苦笑し、相手は人の悪い笑みを引っ込めた。
「半分ね」
「半分って、どっちが…」
「うーん、話してもいいけど、後ろからお迎えが来てるよ」
「…え?」
一瞬、本気でなんのことか分からなかった。
迎え?
サボりのイルカをクラスメイトが呼びにでもきたのかと振り返ろうとして、遠くから聞こえてくるいやーな声に気づいた。
暗部だ!
気づいた途端、逃げの一手に走る。
イルカの頭から、どこかテンポのずれた園芸部員のことは消え去っていた。
「カカシ」
花に水を遣り、さて帰るかと裏門に向かったカカシを生徒会長が呼び止めた。
「彼に会ったかい?」
「ああ、まぁ、ね。アンタが水遣りなんて雑用押し付けるからさ」
しぶしぶとため息を吐く。正直、会いたくはなかった。
「ふうん?」
探るような視線はスルーして、カカシは頭を掻いた。
「なんで会わせようとしたのよ」
「弟が世話になっているみたいだからかな? どんな相手か気になるだろう」
「だったら自分で会いに行けばいいじゃない」
「それが、いくら呼んでも来てくれないんだよ」
そりゃ、生徒会長に呼ばれたら行きたくはないだろうな。
納得してカカシは帰途についた。
「おいおい。親友を置いて行くことないだろ」
『親友』。初めて聞いた。何時の間にそんなものになったのだろう。
「アンタの悪趣味にはついていけないよ」
力が抜けて肩を落としたカカシを、慰めるように生徒会長様が肩を抱いた。
その慣れた様子にカカシはますます肩を落とすのだった。
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カラコンで色調補正は出来ないと思うよ、イルカ(笑)
4代目(生徒会長)の弟はナルトです。
次は、九尾(ナルトの双子の弟)とサスケがナルトを取り合ってる話とか書こうかなww
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