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カカイルSS :イルカ下忍 休暇?中


『隠里の人々』から一部抜粋して加筆しました。
イルカ下忍時代妄想!(笑)





『イルカ下忍 休暇?中(隠里の人々 抜粋)』  (by hana)


「よぉ。生き延びたみてぇじゃねぇか」
「アスマさん!?」
前線から戻り、久々にのんびりと里の田舎道を歩いていたイルカは、対面からやってきた銜え煙草の髭男を見て走り寄った。
「お戻りになっていたんですか?」
「いや。まぁ、な」
髭男がぽりぽりと頭をかく。
この男、三代目火影の息子なのだが放蕩が過ぎて里にいつかない為、暗部並に顔が知られていない。
イルカが知っていたのは、両親が死んだ後、三代目が度々身内の祝いの席に呼んでくれた為。顔を合わせる機会が多かったのだ。
どうも親子仲がしっくりいっていないらしいのだが、イルカからすれば親がいるだけで羨ましい話だ。
アスマもそれを承知しているのか、イルカがいると親子喧嘩が減る。
それを利用した親族がイルカを祝いの席に呼び可愛がるので、イルカはかなりいい加減に生きているアスマにして、中々扱いにくい知り合いではあった。
言葉を濁すアスマを追わず、イルカは世間話へと話題を流す。
先の国境紛争より、数ヶ月が過ぎていた。
「今度後輩が出来るんですよ」
「へぇ。なんだ、また班編成があったのか」
「はい。紛争後にアカデミーを卒業した下忍を、中忍を班長にした『なんでも屋』班としてチーム編成しなおすそうです」
「その班長がお前か?」
「まさか。さすがに班長はベテランの中忍です」
「で、お前さんが羊飼いか牧羊犬ってとこか」
「どうでしょう。詳しいことは分かりませんが、いまは兎も角、人手が足りませんから」
イルカは人好きのする顔で苦笑した。鼻の上の傷を触っているので困っているのだろう。
確かに忍界大戦ほどではないが、国境紛争での被害は酷いものだった。
「まぁ、ほどほど頑張れや」
「はい。あ、そうだ! アスマさんにお会いしたらお聞きしたいと思っていたんですが、」
「?」
イルカがアスマにこんなことを言うのは珍しい。いつも控えめで挨拶以上の会話をするタイプではないというのに。
「多分、上忍の方だと思うんですが、珍しい銀髪の方を知りませんか。多分美形だと思うんですけど…」
「んあ!?」
この瞬間、煙草を吹き出さなかった自分をアスマは褒めてやりたい。
その男はお前のストーカーだが、どこで会ったんだ!? とはまさか言えず、アスマはゆっくりと深呼吸した。
「その男がどうかしたのか?」
「助けていただいたんです。前線に向かう途中で敵に囲まれたところを。それで里に帰ったらお礼をしようと思っていたんですが」
探し回っても見つからないのでアスマに聞いたというイルカの肩を、アスマはぽんぽんと軽く叩いた。
その男は暗部で里に殆どいやしねぇから探しても見つからねぇが、時間の許す限りお前さんのストーキングをしている背後霊のような存在だから、その辺に向かって礼の一つも言っときゃ伝わるぜ、とはまさか言えない。
「どうかな。会ったとしても一々覚えてねぇしな」
アスマのいい加減さをよく知っているイルカはそれで納得して一礼すると、ひょこひょこと何処かへ歩いていった。
また探しに行ったのかもしれない。
「『命の恩人』ねぇ。似合わねぇ真似しやがるな」
呟くと共にどこからともなく腐った卵が飛んできた。ひょいとアスマが避けると、近くの太い幹が軽く抉れた。
背後霊健在。
「…可哀相なヤツ」
どうやら『命の恩人』に憧れを抱いているらしいイルカを偲んでアスマは軽く瞑目した。

 

「イ、イルカ先輩~」
後ろから情けない声が聞こえる。
イルカはきょろきょろと初めて見る街をもの珍しげに眺めながら背中でその声を聞いていた。
「ほんっとーに俺たちみたいなのがこんなとこにいていいんですかね」
語尾が震えている。
イルカの後ろについて歩く、イルカより少し年下の二人は場違いなところに迷い込んでしまった緊張からか、何気に寄り添い迷子のわんこのように途方に暮れてびくびくしていた。
「お前らな」
足を止め、イルカが振り返る。
「これも任務なんだぞ! 情けないこといってないでしっかりしろ!!」
いつもの癖で二人に拳固を落とすため腕を振り上げたイルカだが、後輩二人の世にも情けない姿に脱力し、腕と、ついでに肩も落としてため息をついた。
まぁ、二人の気持ちも分からなくはない。
アカデミーを出て初めて来た見知らぬ土地。しかも世に知れた高級歓楽街とあって人出も多いし里の十倍ぐらい賑やかだ。
道行く男女も小粋で華やかで田舎者は居るだけでつい気後れしてしまう。
イルカもプライベートだったらこんな気軽に街を見物など出来なかったかもしれないが、これは任務だ。
いかにも物慣れない田舎者っぽく安宿に一泊して街を見て歩くだけの簡単なものだが任務は任務。歩けといわれれば歩くしかない。
それに始めこそ街の華やかさに圧倒されてしまったが、中に入れば道行く人々がすれ違う相手を気になど留めていないことがすぐ分かる。
時々くすくすと笑う娘達と行き会うこともあったが、大半の人間は街の華やかさを楽しむことに夢中でイルカたちのような田舎者のことは路傍の石ほども気に留めていない。
そうと気づけば自然肩の力も抜け、イルカも普段は見ることなど出来ない街の賑わいを楽しんだ者勝ちという気分になった。
「イルカ先輩って普段は暢気なのにクソ度胸がありますね」
『いつものように』先輩に叱られたことで少し安心したのだろか。
緊張でこちこちになっていた後輩二人の顔が少し緩んだ。
それでも寄り添うように手を離そうとしなかったが、そこは見てみぬふりをした。
ま、迷子にならずにすむしな。
道行く娘達にくすくすと笑われようが、迷子になって任務に失敗しました、なんてことになるよりはいい。
最も『上はそれでもいいんだろうけど』。
後輩達に教えなくていい本音は心の中でひっそりと呟いた。

 

過日、火の国は長らく国境争いを続けていた隣国と休戦した。
休戦と言っても一時的なもの。それがどれぐらい実のあるものなのか知れたもんではない。
火の国の思惑は置いておくにしても、隣国及び傍観している他国の動向は知っておきたい。
それを調べるのはもっと上の任務だが、イルカたちのような忍がうろうろすることで、各国諜報員の巣窟と言われるこの街がどんな風に動くのか。観察することが今回の任務だった。
観察するのは勿論どこからか見ている上の忍。
イルカたちの役目はうろうろと街をうろつけばいいだけで、アカデミー出たての新人でも十分務まるランクの任務だった。
そう。偽りかもしれなくても、アカデミー出たての新人が死なない任務が出来た。休戦が終るまでに場数を踏めば、彼らの生き残る確率はイルカ達世代よりよっぽど高くなるだろう。
そう考えると間抜けとも思えるこの任務を存分に楽しむことが出来た。
なによりも里の経費で歓楽街で遊べるわけなのだ。こんな割のいい任務もない。
イルカはちょっと相好を崩し、後ろの二人が迷子にならないよう気を配りながらも、きょろきょろと道の両脇に並ぶ瀟洒な建物を眺めていた。
その意識の端に、かすかに引っかかるものがあった。少し先の十字路を横切るように消える後姿。記憶を呼び起こすそれを追ってイルカは足を速めた。
「「先輩!?」」
ユニゾンで迷える子犬たちが叫ぶが、
「悪い。先に帰ってろ」
イルカは足を止めなかった。
まぁ何かあったら知らせぐらいはくるだろう。
何事も経験だぞ、とイルカは心の中で後輩に手を合わせ足早に人影を追った。

 

「おっかしいな。この辺に居たはずなんだけど…」
気になった後姿を追ううちに表通りを遠く離れてしまったらしい。人影もまばらな川辺まできて、イルカはきょろきょろと周りを見回した。
川辺と言っても自然の川ではない。堀のように人の手で形を作られた水路の脇には柳のような木が等間隔で植えられていた。
「誰を探してるんだい」
見慣れぬ景色に意識が逸れたイルカの後ろから声がかかった。
一応忍のイルカの不意をついたのだ。一般人ではなさそうだ。
この街は中立地として暗黙の協定が結ばれており、プロの争いごとを禁じている。
だからといって油断は出来ないが、イルカはゆっくりと振り返った。
着流しの姿のいい若い男が両腕を組んで川辺の木に寄りかかっている。すかした感じの男だったが、イルカを見てかすかに顔を緩めた。
「やっぱりあんたか! ほら、覚えてないか!? 俺あんたに助けられて」
男はイルカの口を止めるように、微かに首を傾げた。
「さあてね。俺も雛の面倒は散々みさせられたから、いちいち覚えてないな」
覚えていないといいながら、にやにや笑っている。嘘だと感じたがこんな場所で「どこで」世話になったかなど、言えないイルカは言葉につまった。
「いいのか? アンタの雛、はぐれて鳴いてるんじゃないのか」
任務に手を抜いてんじゃねぇよ、と遠まわしに示唆され、イルカはパクパクと金魚のように口を開閉した。
ぷぷぷ、と相手が笑う。
恥ずかしさで首から上が真っ赤になった。
「わかったよ! 『後で』会いに行くからな!!」
『任務が終ったら』か『里に戻ったら』か。
約束ともいえぬ台詞を叩きつけ、イルカは踵を返して元来た通りへ戻っていった。
その背を見送り男が呆れた顔をする。
「なぁにやってんだろうね。尻に殻くっつけたままの雛が。あれじゃ、次で死ぬか」
がらりと雰囲気が変わった。
イルカといるときはすかした形のいい男といった感じだったのが崩れ、血の匂いを纏いつかせる。
「追いますか」
風に乗せた微かな声が男の耳元に届く。
「放っとけ。『俺』に会ったんだ。任務のランクは上がるだろうが、向こうでなんとかするだろ」
少しだけ消えた後姿を眺め、銀髪の若い男は慣れた足取りで街の中に消えていった。
予想通り、その後何故か不運に見舞われまくったイルカ達は歓楽街を楽しむどころではなくなり早々に逃げ出すことになるのだが、任務の成果は上がったようで当初より上乗せされた報酬を受け取った。
報酬を手に微妙な顔をする後輩二人の目が見られず、イルカは心の中でこっそり謝るのだった。



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任務中の邂逅。
カカシを知らない頃のイルカです。
コピ本ではこの後、リリカル?で恥ずかしい話になっちゃうので、未だに読み返せません(苦笑)
後輩はコテツくん達です。
時代考証は気にしちゃだめっすw

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